WHO 脳腫瘍分類第5版2021:主な変更点(第39回日本脳腫瘍病理学会 小森隆司先生の教育講演)より抜粋と参考文献追加
WHO第5版におけるグリオーマ分類
・浸潤性グリオーマを成人型と小児型に分ける.
・IDH-wild-typeはastrocytomaとはしない.IDH mutationありはglioblastomaとはしない.
・悪性度は腫瘍型ごとに存在するもので,腫瘍により同一悪性度であっても予後は異なる.
・悪性度の表示をアラビア数字にする.
成人浸潤性グリオーマ
IDH-wild type diffuse astrocytomaに
微小血管増殖 or
壊死 or
以下の一つ
①TERTプロモーター変異:LOH 1p/19qを伴う(IDH変異とは排他的)
②EGFR遺伝子増幅:通常の3倍以上,FISHあるいはPCR
③+7/-10染色体コピー数異常
があればGBMと診断する.
IDH-wild type diffuse astrocytomaで①TERTプロモーター変異,②EGFR遺伝子増幅,③+7/-10染色体コピー数異常の全て持っていない腫瘍が少数存在するが,NF1やBRAF変異を伴う小児型腫瘍の可能性がある.
IDH-mutant astrocytomaは核分裂像の多寡によって,予後に差が無い.
細胞密度,血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失で予後に差が出る.
DH-mutant astrocytoma, grade2
退形成性を欠き,核分裂像はないか,あっても少数.
微小血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失はない.
IDH-mutant astrocytoma, grade3
退形成性と有意な核分裂像を伴う.
微小血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失はない.
IDH-mutant astrocytoma, grade4
微小血管増殖または壊死またはCDKN2A/B共欠失を認める.
CDKN2A/B
CDKN2Aの遺伝子座には2種類のタンパクp16INK4Aおよびp14ARFがコードされている。p16INK4Aは、サイクリン依存性キナーゼ (CDK)阻害分子であり、CDK4/6のサイクリンDへの結合を阻害する。そのため、サイクリンD-CDK4/6複合体によるRBのリン酸化が抑制され、RBによる転写制御因子E2Fの阻害が引き起こされる。その結果、E2Fの制御下にあるG1期からS期への移行に関与する遺伝子群の発現が抑制され、細胞周期の進行が停止する。一方で、p14ARFはMDM2によるTP53の分解を阻害することで、TP53の細胞周期の停止機構やアポトーシスの誘導を促進かつ維持する働きを有する。
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/CDKN2A
CDKN2BはCDK阻害分子p15INK4Bであり、サイクリン依存性キナーゼ4および6 (CDK4/6)のサイクリンDへの結合を阻害する。そのため、サイクリンD-CDK4/6複合体によるRBのリン酸化が抑制され、RBによる転写制御因子E2Fの阻害が引き起こされる。その結果、E2Fの制御下にあるG1期からS期への移行に関与する遺伝子群の発現が抑制され、細胞周期が停止する。
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/CDKN2B
CDKN2A/Bの共欠失を検出する方法:MLPA法
Multiple Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法による遺伝子異常の検出
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsft/7/2/7_102/_pdf/-char/ja
CDKN2A遺伝子の共欠失とCDKN2Aの産物であるp16タンパクの染色性消失は一致率が悪いので,CDKN2A遺伝子の近くにあるMTAP遺伝子産物の免疫染色が用いられる.
FISHによるCDKN2A遺伝子喪失の代替アッセイとして,免疫染色によるMTAP蛋白の細胞質からの消失(MTAP loss)の検出が用いられる.(MTAP: methyolthioadenosine phosphorylase)

https://www.researchgate.net/figure/Diagram-showing-the-9p213-locus-containing-the-MTAP-CDKN2A-CDKN2B-and-CDKN2B-AS1_fig1_311625169
より
WHO第5版におけるグリオーマ分類
・浸潤性グリオーマを成人型と小児型に分ける.
・IDH-wild-typeはastrocytomaとはしない.IDH mutationありはglioblastomaとはしない.
・悪性度は腫瘍型ごとに存在するもので,腫瘍により同一悪性度であっても予後は異なる.
・悪性度の表示をアラビア数字にする.
成人浸潤性グリオーマ
IDH-wild type diffuse astrocytomaに
微小血管増殖 or
壊死 or
以下の一つ
①TERTプロモーター変異:LOH 1p/19qを伴う(IDH変異とは排他的)
②EGFR遺伝子増幅:通常の3倍以上,FISHあるいはPCR
③+7/-10染色体コピー数異常
があればGBMと診断する.
IDH-wild type diffuse astrocytomaで①TERTプロモーター変異,②EGFR遺伝子増幅,③+7/-10染色体コピー数異常の全て持っていない腫瘍が少数存在するが,NF1やBRAF変異を伴う小児型腫瘍の可能性がある.
IDH-mutant astrocytomaは核分裂像の多寡によって,予後に差が無い.
細胞密度,血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失で予後に差が出る.
DH-mutant astrocytoma, grade2
退形成性を欠き,核分裂像はないか,あっても少数.
微小血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失はない.
IDH-mutant astrocytoma, grade3
退形成性と有意な核分裂像を伴う.
微小血管増殖,壊死,CDKN2A/B共欠失はない.
IDH-mutant astrocytoma, grade4
微小血管増殖または壊死またはCDKN2A/B共欠失を認める.
CDKN2A/B
CDKN2Aの遺伝子座には2種類のタンパクp16INK4Aおよびp14ARFがコードされている。p16INK4Aは、サイクリン依存性キナーゼ (CDK)阻害分子であり、CDK4/6のサイクリンDへの結合を阻害する。そのため、サイクリンD-CDK4/6複合体によるRBのリン酸化が抑制され、RBによる転写制御因子E2Fの阻害が引き起こされる。その結果、E2Fの制御下にあるG1期からS期への移行に関与する遺伝子群の発現が抑制され、細胞周期の進行が停止する。一方で、p14ARFはMDM2によるTP53の分解を阻害することで、TP53の細胞周期の停止機構やアポトーシスの誘導を促進かつ維持する働きを有する。
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/CDKN2A
CDKN2BはCDK阻害分子p15INK4Bであり、サイクリン依存性キナーゼ4および6 (CDK4/6)のサイクリンDへの結合を阻害する。そのため、サイクリンD-CDK4/6複合体によるRBのリン酸化が抑制され、RBによる転写制御因子E2Fの阻害が引き起こされる。その結果、E2Fの制御下にあるG1期からS期への移行に関与する遺伝子群の発現が抑制され、細胞周期が停止する。
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/CDKN2B
CDKN2A/Bの共欠失を検出する方法:MLPA法
Multiple Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法による遺伝子異常の検出
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsft/7/2/7_102/_pdf/-char/ja
CDKN2A遺伝子の共欠失とCDKN2Aの産物であるp16タンパクの染色性消失は一致率が悪いので,CDKN2A遺伝子の近くにあるMTAP遺伝子産物の免疫染色が用いられる.
FISHによるCDKN2A遺伝子喪失の代替アッセイとして,免疫染色によるMTAP蛋白の細胞質からの消失(MTAP loss)の検出が用いられる.(MTAP: methyolthioadenosine phosphorylase)
https://www.researchgate.net/figure/Diagram-showing-the-9p213-locus-containing-the-MTAP-CDKN2A-CDKN2B-and-CDKN2B-AS1_fig1_311625169
より
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