produced by 平野宏文 Hirofumi Hirano a neurosurgeon, to communicate with his patients and friends

脳神経外科医 平野宏文のサイト

脳神経外科医 平野宏文のウェブサイトです. 医師として,また,個人として,私と関係ある人々とのコミニュケーションを図るための場所です.                            脳神経外科に関連する疾患についても記載していこうと思います.

頭のこと1
I.初めに

脳神経外科の医師として、日常の診療に当たり、患者さんやそのご家族に話をしたり、また、医学部の学生に講義をしたりしていて気がついたことを書き留めておこうと思い、ここに文章を書き始める。よって、この文章の中身は、気楽な気持ちで書き下し、わざわざ文献を検索したりはしていない。であるから、私の頭に入りきらないような複雑な内容は当然出てきたりはしないのである。そのつもりで内容の不十分な点はご容赦願いたい。

II.頭の構造
 
頭の構造と大げさに構えてみても、難しく考える必要はない。外側から順番にたどっていきたいと思う。組織解剖学では無いので大まかな所が理解できれば良いのである。しかし、看護学校の学生に講義をしたりするとあまり良く理解してもらっていなかったり、また、患者さんやそのご家族には誤解されていることも結構あるのも確かである。
 
A.頭皮、皮下組織
頭と一口に言っても、何処を指しているのかあいまいなことがある。ここでは顔面を除いて、一般的に頭髪の生えている辺りを指すと思って頂きたい。まず、一番外側にあるのが頭皮である。ここには普通、頭髪が生えている。そして、体の他の場所と同じように皮下組織があり、血管が走っている。この皮下組織を含めた頭皮の厚さは人により違いがあり、頭の手術をすると厚い人や薄い人がある。そして、頭皮にも動脈と静脈があるが、他の部分に比べて血管が多いのが頭皮の特徴の一つである。そのため、頭を怪我すると傷は小さくても出血が多い。総頚動脈から外頚動脈という動脈が分岐してきて顔面と頭皮に血液を運んでくる。その外頚動脈から浅側頭動脈という動脈が、耳介(耳たぶ)の前方を上に向かって走っている。以前、硝子で耳の上辺りを切った男性が救急車で私のいた病院にやって来たことがあった。この患者さんは病院に着いたとき、かなり出血して、少々血の気が失せていた。彼は背広を丸めて傷口を押さえていたが、その背広は絞ると血液が滲み出すぐらいに出血していたのだ。この浅側頭動脈の太さも個体差があり太い人や細い人があるが、根本の方、つまり下の方で切れたりすると激しく出血する。うろうろしていると大出血するので、そのような時は傷口より心臓に近い所を圧迫して出血を防ぐのがよい。また、ある時は男の子が転倒して後頭部をほんの少し、怪我してきたことがあった。圧迫していたら血が止まったので、子どものお母さんが、消毒のため傷を見ようとして髪の毛をかき分けて傷口を出したとたん、急に出血してびっくりして来られたとのことであった。この時の傷は3mm位の小さなものだった。珍しいことだが、まるで狙いすましたようにちょうど後頭部の動脈が切れていた。
 
 このように頭部の皮膚、皮下組織は血管が豊富なため怪我をすると激しく出血し、また打撲によりコブができやすい。頭を打ったりしてできるコブは全部同じような気がするが、実はいくつかの種類がある。頭皮から下に向かって皮下組織が有り、場所によっては筋肉につながる帽状腱膜という腱膜があり、その下が骨膜、頭蓋骨となっている。
普通、柱にぶつかったりして、皮下組織などの軟部組織が挫傷し、組織内に出血して腫れてくるコブがあるが,これが一つめの良く見られるコブであり、これはできてしまったら、放置するしかない。こう言うと無責任に聞こえるが放置しても体裁が悪いぐらいで、あまり心配いらない。
2番目の種類のコブはブヨブヨしたコブである。これは先に説明した頭皮以下の構造物である帽状腱膜と骨膜との間などの結合が弱い所に血が溜まってしまったものである。このタイプのコブは触ると軟かく、血腫周辺部から内側にかけて頭蓋骨が陷没しているように感じられるが、実際は陷没骨折など無いことのほうが多い。コブ内容は血腫であり、注射器で中身を吸い出すと小さくなる。
3番目に、頭蓋骨外側の骨膜と頭蓋骨の間に血腫ができるコブもあるが、あまり多くない。骨の縫合線を越えて広がらないのが,3番目のコブの特徴でもある.分娩の時に骨膜下に出血する頭血腫といわれるものは,このタイプである.


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Hirofumi Hirano MD, PhD, Department of Neurosurgery