produced by 平野宏文 Hirofumi Hirano a neurosurgeon, to communicate with his patients and friends

脳神経外科医 平野宏文のサイト

脳神経外科医 平野宏文のウェブサイトです. 医師として,また,個人として,私と関係ある人々とのコミニュケーションを図るための場所です.                            脳神経外科に関連する疾患についても記載していこうと思います.

悪性リンパ腫③
中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬

X連鎖無ガンマグロブリン血症という病気がある.X染色体上の遺伝子異常に起因する疾患で,B細胞の発生および成熟が進まず,成熟B細胞が欠如するため,男子乳児の扁桃は非常に小さく,リンパ節が発達しない.肺炎や副鼻腔炎,皮膚の可能性感染症の他,ウイルス性感染症にも罹患しやすい.この病態を発見したのは,Ogden Carr Brutonで,小児科医であり,ブルトン型無ガンマグロブリン血症とも呼ばれるこの疾病に名を残す免疫学者である.X連鎖無ガンマグロブリン血症の原因遺伝子はBTK 遺伝子で,ブルトン型チロシンキナーゼ (Bruton's tyrosine kinase)をコードしている.

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)は,中枢神経内にのみ病巣を認める悪性リンパ腫で,現在の所,基本になっているのは,大量メトトレキサート(MTX)療法と全脳照射である.しかし,難治性のものが存在し,MTXの効果が不十分で,寛解に持ち込めない症例が存在する.

中枢神経系原発リンパ腫の多くを占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はB細胞受容体からのシグナル伝達が活性化して増殖が生じている.B細胞受容体の下流には先のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)が存在する.

2020年5月20日,ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であるチラブルチニブ塩酸塩「ベレキシブル(R)錠 80mg」が「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の治療薬として発売された.

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Hirofumi Hirano MD, PhD, Department of Neurosurgery