produced by 平野宏文 Hirofumi Hirano a neurosurgeon, to communicate with his patients and friends

脳神経外科医 平野宏文のサイト

脳神経外科医 平野宏文のウェブサイトです. 医師として,また,個人として,私と関係ある人々とのコミニュケーションを図るための場所です.                            脳神経外科に関連する疾患についても記載していこうと思います.

悪性リンパ腫(脳に発生するもの:中枢神経原発悪性リンパ腫) について①
身体の他の部分に発生したことがなく,脳(中枢神経)に初めて発生する悪性リンパ腫を中枢神経原発悪性リンパ腫( primary central nervous system lymphoma: PCNSL)と言います.
なぜ,身体の他の部分に発生したことがなく,と断っているかと言いますと,悪性リンパ腫は,身体のどこにでもできるからです.中枢神経系に発生する前に,腸などに発生したことがあれば,それが脳に転移して来たのかもしれませんから,中枢神経原発と断定できなくなります.
では,なぜ,中枢神経原発の悪性リンパ腫を,わざわざ別扱いにしているのかと言いますと,中枢神経(脳や脊髄)に発生してくる悪性リンパ腫は,他の部分に発生してくる悪性リンパ腫と比べて予後が良くないからです.

脳腫瘍全国集計調査によりますと,この脳に発生してくる悪性リンパ腫は徐々に増えてきています.2001年から2004年分の集計によりますと,原発性脳腫瘍の中で,多い方から5番目に入ってきています.原発性脳腫瘍の3.6%を占めていおり,高齢化による影響を受けているのかもしれません.

中枢神経原発悪性リンパ腫は,Bリンパ球が増殖するものがほとんどで,組織学的には,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と呼ばれています.

発症した場合,進行は早く,麻痺や高次脳機能低下(いわゆる認知症)で発症することが多いようですが,脳のどこにでもできるので,神経症状としては何でもあり得ると考えられます.
視神経は脳の延長であり,網膜につながっています.そのため,中枢神経原発悪性リンパ腫は眼内リンパ腫として発症することや,眼内リンパ腫を伴っている場合があります.視力低下として自覚される場合が多く,眼の検査でぶどう膜炎の状態と診断されることがよくあります.

腫瘍性のリンパ球が,脳に散らばるように増える場合と,ある程度まとまった塊として増殖する場合がありますが,MRIなどの画像上,塊として確認されても,かなりの腫瘍細胞が広い範囲にびまん性に広がっています.よって,手術のみで完治できません.手術では,しっかりと診断を付けることが重要になります.

進行が早く,数日でかなり病状が悪化することもあります.診断と治療を急ぐ必要がある脳腫瘍です.(続く)

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Hirofumi Hirano MD, PhD, Department of Neurosurgery