produced by 平野宏文 Hirofumi Hirano a neurosurgeon, to communicate with his patients and friends

脳神経外科医 平野宏文のサイト

脳神経外科医 平野宏文のウェブサイトです. 医師として,また,個人として,私と関係ある人々とのコミニュケーションを図るための場所です.                            脳神経外科に関連する疾患についても記載していこうと思います.

BMI(Body Mass Index)ボディマス インデックスについて
BMI(Body Mass Index)ボディマス インデックスは,体重と身長から計算され,肥満の程度を表す.BMI 体重kg ÷ (身長m)2 である.
子どもには他の指数が用いられるが,成人ではこれを元に標準体重が計算される.
このBMI=22が適正体重とされているものが多いが,年齢や体重や身長などにより,この22という数字がどれほどの根拠をもっているのか,確認したことはなかったので,調べてみた.

まず,日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト,e-Statの2019年のデータを用いて,年齢と身長,体重から年齢別BMIをグラフ化した.

BMIは子どもには適さない指標であるから中学生以上の13歳以上を見ると,男性が大きく,年齢と共に上昇する傾向にある.

次にこのデータの13歳以上を男女別に散布図にしてみた.

男子の13歳が飛び離れ値を示しているが,これは未だ成人体系から隔たりがあるためと思われる.

次に,中学生男子~大人の身長毎の体重データがhttps://funcity.work/diet/info/heightのサイトにあったので,これを用いて身長とBMIのデータを作ってみた.2020年厚生労働省調査のデータであるらしい.

非常にきれいな男女別のグラフになる.身長が高くなるとBMIは大きくなる傾向を示すのではないかと考えていたが,そうではなかった.身体の形状が相似型であるならば,体重は体積,つまり身長の3乗に比例すると考えられるので,体重を身長の二乗で割って得られる値であるBMIは高身長ほど大きくなる傾向があると予想していたがそうなっていない.と言うことは,人間は高身長になるほど,体型が細くなり,その細くなる程度が体重の3乗根に一致しているということになる.恐るべしBMIである.
それでも,男性のBMIが女性のBMIより常に6%ほど大きい.男性の身体は重たい成分,骨や筋肉が女性より多いということであろうか.男女を同じBMI値で評価することには問題がありそうである.

ところで,BMI=22が標準とされているが,それが最も健康的であるのだろうか?
Body Mass Index and Mortality From All Causes and Major Causes in Japanese: Results of a Pooled Analysis of 7 Large-Scale Cohort Studies
日本人における肥満度と全死因および主要死因による死亡率:7つの大規模コホート研究のプール解析結果
という論文がある.要旨を翻訳すると

背景 :成人353,422人(男性162,092人、女性191,330人)を含む日本の7つの進行中のコホートのデータをプールし、体格指数(BMI)が総死亡率および原因特異的(がん、心疾患、脳血管疾患)死亡率に及ぼす影響を定量化し、日本人の中高年における最適なBMI範囲を特定した。

方法: 平均12.5年の追跡期間中に41 260人が死亡した。Cox比例ハザードモデルを用いて、各研究における年齢、居住地域、喫煙、飲酒、高血圧、糖尿病、身体活動の既往をコントロールした後、各BMI区分のハザード比(HR)を推定した。要約指標を得るためにランダム効果モデルを用いた。

結果: 全死因死亡率とがん死亡率では逆J字型パターンがみられ(女性では高BMIでのみリスク上昇)、心疾患死亡率と脳血管疾患死亡率ではU字型またはJ字型の関連がみられた。総死亡については、BMIが23~25の場合と比較すると、男性のHRは14~19で1.78、19~21で1.27、21~23で1.11、30~40で1.36、女性では14~19で1.61、19~21で1.17、27~30で1.08、30~40で1.37であった。高BMI(≧27)は男性で0.9%、女性で1.5%を占めた。

結論: 日本人の中高年において、総死亡および主要死因による死亡のリスクが最も低かったのは、BMIが21~27kg/m(2)であった。

BMI22が標準という通説を覆さないように結論が書かれているが,結果の文章には,

表2は、男性におけるBMIと死亡率のプール解析結果をまとめたものである。モデルを交絡変数(HR2)で完全に調整すると、全死因、がんおよびその他の原因による死亡率について逆J字型の関連が観察された。これらの転帰に関して、BMIが23未満の人では、3つのカテゴリーすべてにおいて統計的に有意なリスク増加が観察された。BMI範囲23~25kg/m2と比較して、BMI範囲14~19kg/m2、19~21kg/m2、21~23kg/m2のHRは、それぞれ全死因死亡で1.78、1.27、1.11、がん死亡で1.44、1.23、1.10、その他の原因による死亡で2.15、1.42、1.17であった。

とあり,死亡率が最も低いのはBMI範囲23~25kg/m2である.
女性でも,死亡率が最も低いのはBMI 23-<25 である.

つまり,標準とされるBMI22より少し太っている方が死亡率が低い,という結果である.
BMIが24なら,男女とも最も死亡率が低い,と言っても良さそうである.




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Hirofumi Hirano MD, PhD, Department of Neurosurgery